ストック・オプション評価Stock Option

信託型ストック・オプションとは

信託型ストック・オプション(信託SO)とは、信託契約と有償ストック・オプションを組み合わせて組成する新株予約権であり、主には下記のメリット・デメリットがあります。
 
 

信託SOのメリット

  • 柔軟な行使条件の設計が可能
  • 人事考課制度に合わせて、事後的にストック・オプションの付与対象者を決められる
  • 信託型ストック・オプションを発行したタイミングの行使価格がそのまま将来の行使価格となる、すなわちバリュエーションが発行時点で固定される
  • 付与対象者のキャピタルゲインは株式譲渡所得(税率約20%)のため手取りが多く、インセンティブ効果が高い
  • 投資家と合意したストック・オプション・プール(ストック・オプションの発行枠)をすべて信託型ストック・オプションにすることが多く、以後、外部投資家に毎回ストック・オプションの発行を相談する必要がなくなる。
  • ストック・オプションの付与を前提とした採用活動を行う場合、信託型ストック・オプションがあることにより、柔軟な採用戦略をとり得る。

 
 

信託SOのデメリット

①外部アドバイザーに対する組成コストが発生

当社をアドバイザーに起用いただく場合のコスト感は下記参照

②委託者個人(多くは創業者)からの支払が発生

当該金銭は、委託者から受託者に払い込まれ、同日に受託者から会社に支払われます。
(会社に払い込まれるのは、受託者の税後の金額であるのが一般的)

③信託受託者を見つける必要がある

民事信託の場合、基本的には顧問税理士に依頼することが多くなります。信託受託者は、法人課税に関する届出を税務署等に提出した上で、信託期間にわたり、申告書の提出義務が生まれます(実際の納税は初年度のみ)。

上記の税務手続きが生じる点、および信託受託者としての独立性の観点から会社役員・従業員が受託者になることは推奨されません。

④上場審査や監査法人監査において、レビュー対応等が必要となることがある。

スタンドバイシーおよび提携先の法律事務所では上場審査および監査法人レビュー対応実績がございます。そのため、信託SOを導入するフェーズによりますが、レビュー対応を含めたご提案が可能です。
 
 

信託SOの仕組み

発行価格行使価格発行会社の
損金性
受け手の税務主な評価
手法
決議方法
適正な時価による
新株予約権の有償発行
一般的には発行時の時価
( 未上場企業は通常、費用計上無し)

株式譲渡時に株式譲渡所得課税
モンテカルロ
シミュレーション
株主総会
特別決議
(公開会社は
取締役会決議)

 
 

スタンドバイシーの報酬テーブル

200万円~500万円程度

設計・評価・法務込みで上記の金額をご案内させて頂いております。
(法務は提携先の法律事務所よりご提供いたします)

主な価格変動要素は下記となります。

①ストック・オプション設計の複雑性

ストック・オプションが行使可能となる業績条件の設定、行使可能期間の設定、ベスティングの内容などにより、信託契約および新株予約権の内容をどこまで複雑にすることを想定しているか

②信託契約の数

一般的には信託契約数を1本~3本程度とすることが多いです。信託契約の数が1本増えることに伴い、御見積は概ね50万円程度の増加(法務コスト)となります。

③上場準備のフェーズ

信託型ストック・オプションを導入するフェーズとしては、創業直後・シリーズAの後・n-2期・n-1期が多いですが、上場から遠いフェーズであるほど、御見積としては低くなります(証券審査対応や監査法人対応の工数、その他ロジ面の工数が少なくなるため)。
 
 

上場事例

未上場時に信託型ストック・オプションを導入して、その後に上場した企業の例として下記が挙げられます。

会社名信託SO導入月・上場月信託契約数・
満了時期(要約)
発行
割合
業績条件要約
株式会社PKSHA Technology信託SO導入月
2016年7月
 
上場月
2017年9月
信託契約数:3
信託満了時期:
1.2018年6月又は上場後半年の遅い方
2.2019年12月又は上場後2年の遅い方
3.2021年6月又は東証一部又は二部への上場後半年の遅い方
6.9%2017年9月期~2019年9月期のいずれかの期の営業利益が以下を満たす
a. 2.8億円を超過した場合:行使可能割合:50%
b. 4億円を超過した場合:行使可能割合:100%
RPAホールディングス株式会社信託SO導入月
2018年2月
 
上場月
2018年3月
信託契約数:3
信託満了時期:
1.上場後2年
2.上場後3年
3.上場後5年
3.0%2019年2月期~2020年2月期の経常利益が以下を満たす。
a. 6.5億円を超過した場合:行使可能割合:30%
b. 8億円を超過した場合:行使可能割合:60%
c. 10億円を超過した場合:行使可能割合:100%
株式会社MTG信託SO導入月
2017年8月
 
上場月
2018年7月
信託契約数:3
信託満了時期:
1.上場から2.5年又は2020年12月の早い方
2.上場から5.5年又は2023年12月の早い方
3.上場から8.5年又は2026年12月の早い方
1.5%2019年9月期~2022年9月期のいずれかの期の税金等調整前当期純利益が100億円以上となった場合のみ行使可能
株式会社GA technologies信託SO導入月
2018年3月
 
上場月
2018年7月
信託契約数:1
信託満了時期:
公表資料からは不明
3.5%第4回:2019年10月期~2021年10月期のいずれかの期の営業利益が以下を満たす
①10億円を超過:行使可能割合 50%
②20億円を超過:行使可能割合 75%
③40億円を超過:行使可能割合 100%
 
第5回:2020年10月期~2022年10月期のいずれかの期の営業利益が以下を満たす
①30億円を超過:行使可能割合 50%
②40億円を超過:行使可能割合 75%
③50億円を超過:行使可能割合 100%
リックソフト株式会社信託SO導入月
2016年5月
 
上場月
2019年2月
信託契約数:1
信託満了時期:
2019年11月
9.1%2016年7月~2019年6月のいずれかの期間の経常利益が以下を満たす。
a. 1.3億円を超過した場合:行使可能割合75%
b. 1.5億円を超過した場合:行使可能割合100%
株式会社ツクルバ 信託SO導入月
2018年7月
 
上場月
2019年7月
信託契約数:2
信託満了時期:
1.2021年10月
2.2024年10月
2.2% 2019年7月期~2022年7月期のいずれかの期の営業利益が以下を満たす
a. 2億円を超過した場合:行使可能割合:50%
b. 4億円を超過した場合:行使可能割合:100%

*発行割合= 信託型ストック・オプションの株数 ÷ Iの部に記載の発行済み株式総数